2011年6月21日火曜日

「ビッグ3」の背中を追って。遅れてきた大器、岩嵜翔。~厚み増すソフトバンク先発陣~

 ソフトバンク・岩嵜翔が、高校生ドラフト1位指名を受けた'07年は、タレントの揃った年だった。“ビッグ3”として注目された日ハムの中田翔、ヤクルトの由規、同じ千葉県で甲子園出場を競い合ったロッテの唐川侑己が同期生。3人が一軍で活躍する中、岩嵜は素質を評価されながら、結果を残せずにいた。

 元エース・斉藤和巳を一回り小さくした体型から“小カズ”と呼ばれた時代もあったが、1年目のファーム選手権で力投。MVPに輝き、当時の石渡茂二軍監督を「王監督に恩返しができる素材が出てきた」と喜ばせた。だがこの後、力を発揮できず、未勝利のまま、昨シーズンは3敗を喫している。

「もう勝てないのでは」と弱気になっていた岩嵜を見て、「アイツは性格的に優しい。もっと強くならないと」と感じた秋山幸二監督は昨年オフ、彼をプエルトリコのウィンターリーグに派遣した。秋山がそう決めたのは、岩嵜と同じ若い頃に米・独立リーグ・サンノゼに派遣された自身の経験があったからだ。

「言葉がロクに通じず、文化も風習もまったく違う選手たちとシノギを削る。自分は恵まれていると、感謝を知り、1日を大切にするようになった」と当時を振り返る。

「ベテランがバテる夏場に、その力が必要になる」(秋山監督)
 球団職員や通訳、コーチも帯同しない“たった一人”の環境に身をおいた岩嵜は、8勝を挙げる活躍を見せた。プエルトリコの選手たちから、身振り手振りでツーシームを学んだことも大きかった。

 今季、3度目の先発となった5月13日の西武戦。通算10度目の先発でようやく初勝利を挙げることが出来た。その10日後のヤクルト戦でも、5回を無失点に抑えている。岩嵜は「あれほど勝つことが難しいと思っていたのに、一つ勝つと楽になれました。不思議ですねェ」と語り、高山郁夫投手コーチも「困ったら真っ直ぐばかりを投げたがる単純なピッチングから、ようやく脱皮してくれた」と、“1勝”による成長を認めていた。

 現在のソフトバンク先発陣は、杉内俊哉、和田毅、ホールトン、攝津正、山田大樹と充実しているが、秋山監督は「ベテランがバテる夏場に、その力が必要になる」と期待を寄せている。由規、唐川に遅れてやってきた岩嵜は「1勝が次の2勝目に、そして二桁勝利に。一歩一歩、積み重ねていきたい」と力強く語った。
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