2011年11月16日水曜日

確実な犠打と投手起用が最大の見所!? 鷹と竜が相まみえる日本Sの行方。

 
 8勝4敗。  2009年からの交流戦におけるソフトバンクの、中日との対戦成績だ。これは即ち、秋山幸二監督と落合博満監督の対戦成績でもある。
 今年の交流戦は3勝1敗。数字が物語るように、日本シリーズでも「ソフトバンクが圧倒的有利」との声が多い。
 だが、この過去3年の通算成績を詳細にたどると、意外にも両チームの力が拮抗していることが窺える(カッコ内は今季の成績)。
 得点=ソフトバンク 45(14)、中日 38(8)
  安打=ソフトバンク 92(31)、中日 93(26)
  本塁打=ソフトバンク 7(2)、中日 6(2)
  犠打=ソフトバンク 16(6)、中日 6(0)
  打率=ソフトバンク  .242(.254)、中日  .237(.206)
  防御率=ソフトバンク  2.94(2.06)、中日  3.48(3.18)

強力打線のソフトバンクは“繋ぎの野球”を想定練習。

 今季こそ、明らかにソフトバンクが中日を上回っている。しかし、防御率を除けば抜群と言える数字はほとんどない。
 中日にしても、ソフトバンクにこそ防御率は3点台だが、シーズンではリーグトップの2.46を記録しており投手力に自信を持っている。つまり、ソフトバンクは強力打線で相手をねじ伏せられる可能性は低い、となる。
 攻撃面でカギとなるのは、打撃を「線」にすること。いかに繋ぎの野球ができるか、が重要となってくる。
 そのことを見越してか、秋山監督は先に動き出した。
 11月8日、ソフトバンクは徹底的にバント練習を行った。従来、その役割を担う川崎宗則、本多雄一のみならず、小久保裕紀、松中信彦、多村仁志など、主力選手のほとんどが、マシンをはじめバスターやエンドランなど実戦形式でのバント練習に精を出した。
 「いつもやっていること」と指揮官は言う。しかし、この練習には悲壮感も見え隠れする。

「打てない中日」の強さの源泉は確実なバントにあり。

 今季、リーグ3位の147の犠打を決めているとはいえ、そのほとんどが本多(53)と細川亨(34)によるもの。小久保、松中、多村、内川に至ってはゼロだ。緊迫した戦いが続くであろう日本シリーズで、彼らが的確に犠打を決められるかは断定できない。
 その点、中日は犠打に関しては徹底している。“お家芸”と言ってもいいくらいだ。
 チーム総数はソフトバンクを上回る164。チームトップの井端弘和(31)を筆頭に、大島洋平(19)、森野将彦(13)、谷繁元信(12)、荒木雅博(10)と、スタメンの半数以上が10以上の犠打を記録した。
「平田(良介)のような長距離ヒッターにも、バントができなければ2軍に落とすという徹底した方針が落合(博満)監督にはあります。ですから、選手たちは自然と繋ぐ野球を意識するようになるんです」
 通算犠打の世界記録を持ち、昨年まで二軍監督を務めていた川相昌弘は、かつてこのように話していたことがある。
 その平田にしても、今季は7つの犠打を決めている。主力、控え問わず、選手全員が落合の掲げる野球を認識し、実戦でも確実に行える技術を身につけている。これこそが、「打てない中日」の強さの源泉でもあるのだ。

初戦の先発はソフトバンクは和田が濃厚、中日は……?

 犠打を起点とした攻めは中日に分があるとすれば、ソフトバンクは相手を凌駕する潤沢な投手力でゲームを支配してくるだろう。
 エースの和田毅に最多勝のホールトン、防御率1点台の杉内俊哉に先発転向1年目に14勝を挙げた攝津正と、特に先発陣は安定した力を誇る。
 何より、クライマックスシリーズ(以下CS)をローテーション通りに勝てたため、日本シリーズでの投手起用に頭を悩ませる必要がない。さらに、第1戦の先発が濃厚の和田は、'09年以降の中日戦の成績が3勝無敗、防御率0.98と圧巻の数字を残している。
 中日は、本来ならば初戦のマウンドを、ソフトバンクとの対戦成績が2勝無敗、防御率も1.93と安定しているエースの吉見一起に任せたいはずだ。しかし、CS5試合で中3日を含む2試合に登板させた現実から目を背けるわけにはいかない。いくらシリーズまで中5日空いているとはいえ、彼の勤続疲労を考慮すれば第2戦以降に回したほうが無難だ。

落合監督にとっては大事な初戦も「7分の1試合」!?

 そうなると、初戦の先発はチェンが妥当となる。データだけで見ると、'09年以降のソフトバンク戦の成績が5試合で1勝3敗、防御率は4.12とはっきり言って悪い。
 しかし、時としてエース同士の潰し合いを避けるのも落合野球の神髄のひとつでもある。
 それは、レギュラーシーズンの開幕投手の起用からも見て取れる。'04年は、それまで中日では1軍登板機会がなかった川崎憲次郎を、'09年には中継ぎの浅尾拓也を先発マウンドに上げ周囲を驚かせた。指揮官が理想とする投手がいなかったが故の苦肉の策でもあったが、落合監督は初戦よりも2戦目、3戦目を重要視するタイプ。「144分の1試合」と捉えるシーズン同様、日本シリーズでも「7分の1試合」として考えているのだとすれば、非常に不気味だ。
 12年ぶりとなる両者の対決は、12日から始まる。
 ソフトバンクは8年ぶりの戴冠を手にし、プレーオフで負け続けた悔しさを浄化させることができるのか? 中日は落合政権最初で最後の完全なる日本一でシーズンを締めくくることができるのか?
 2011年の最終決戦。王者となるのは、犠打と先発投手起用を支配できたチームになるだろう。



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